"インテル 入ってる"、という日本で最も有名なフレーズは今や死語。"インテル 終わってる"、これが世界中で言われている話です。
なぜインテルはこれほど凋落したのか。それはAI、CPU、チップ製造、さらにはスマホと、ことごとく競争に負けたからです。
投資家から全く期待されていない

令和のブラックマンデーと呼ばれた2024年8月。
インテルの株価は20USDと5年前の1/3にまでなりました。
僕は8か月前にintelの株価暴落の話をyoutubeでしていて、「アナリストは1年経っても株価は上がらないと予想してます」なーんて語っていました。では、いまどうなのか。
はい、全く変わっておりません。トランプ関税があったとはいえ、20USDをウロウロ。僕は証券アナリストなんて競馬の予想屋くらいにしか思ってませんが、本当に上がりませんでした。それほど予測された未来だったんです。
なぜインテルは変わらず凋落し続けているのか。
CPU競争 (VS AMD) 劣勢

CPU競争でAMDに負けた最大の原因は製造プロセスの遅れです。
これがどれだけ微細化できるか = CPUの歴史と言っても過言じゃありません。

いわゆるプロセスルールだとかmn(ナノメートル)とか言われてるのは、半導体をどれだけ細かく作っているかの指標です。これを微細化と言います。数字が小さければ小さいほど細かい。そして良い物と思えば分かりやすい。
Intel | ||
---|---|---|
第11世代 | 14nm | 2021年 |
第12世代 | 10nm | 2021年 |
第13世代 | 10nm | 2022年 |
第14世代 | 10nm | 2023年 |
Core Ultra 200 | 3mn | 2024年 |
インテルは長らく14mnで、12世代でやっと10nm。以降ずっと10nmを超えられないと苦しんでいました。新シリーズのcore ultra 200からTSMC(タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング)にチップ製造を委託。ようやく3mnになりました。
AMD | ||
---|---|---|
5000番台 | 7mn | 2020年 |
7000番台 | 5mn | 2022年 |
9000番台 | 4mn | 2024年 |
一方AMDは以前からTSMCに委託しており、新作のたびにプロセスルールの微細化が進められてきました。(一応各メーカー定義が違ったり、intelの10mnはTSMCの7mnと同じくらいって話もあるけど置いといて)
この5年で明らかに進化したのはAMDの方であり、ユーザーもAMDを買う人が増えたんです。

市場におけるシェアも長らくIntelが独走状態でしたが、今では6:4くらい。恐らく、直近の出荷だけ見るとAMDの方が多いんじゃないでしょうか。

デスクトップCPUにおいてはほぼ拮抗しています。

ノートパソコンのシェア。こっちは思ったほど変わっていません。
シェア率のデータって物によって全然違うので一概には言えませんが、共通しているのはここ5年でAMDが詰めてきていること。
ハイエンド層はみんなAMD7000や9000台のX3Dシリーズを買いますし、ローエンドは型落ちのintel 12世代だったり、AMDの5000番台だったり。
このまま行って価格がずれ堕ちると、いずれはローエンドを7000のX3Dが食っていくわけですから、ほとんどintelの居場所はなくなります。
満を持して発売されたUltra 200はベンチマークスコアは良いんですがいまいちゲームで性能を発揮しきれてません。今回が試金石だとしたら、300シリーズ以降で本当に結果が求められる正念場です。
(引用 : https://www.cpubenchmark.net/)
チップ競争 (VS TSMC) 降伏宣言

チップ競争に関しては、現在TSMCに降伏宣言状態です。
半導体メーカーにはIntel、Samsung、NVIDIA、AMD、TSMCなどが挙げられます。
製造面でトップを走っているのがTSMC。他の企業はよく聞きますが、TSMCは投資家かガジェット好きな人じゃないと中々聞かない名前です。
一番違うのは、TSMCはチップ製造を受託しているのみ。他の企業は設計をして商品を自社の商品として出しています。
企業名 | 設計 | 製造 | |
---|---|---|---|
Intel | ✅ あり | ✅ あり | 自社製造(IDM)。TSMCに製造委託開始 |
TSMC | ❌ なし | ✅ あり | 世界最大ファウンドリ。製造専門で設計は基本行わない |
Apple | ✅ あり | ❌ なし | 独自チップ設計。製造はTSMC依存 |
NVIDIA | ✅ あり | ❌ なし | GPU設計。製造はTSMC委託。 |
TSMCのような製造を専門としている体制をファウンドリ専業と呼びます。一方、intelのように設計から製造に至るまで自社で行う形はIDM。
項目 | IDM | ファウンドリ |
---|---|---|
主な特徴 | 設計も製造も自社で行う | 顧客の設計をもとに製造を行う |
設計 | ✅ あり | ❌ なし(基本的に設計しない) |
製造 | ✅ 自社工場で製造 | ✅ 顧客のチップを製造 |
チップ製造提供 | ❌ 基本は自社用 | ✅ 他社向けに製造 |
代表的な企業 | Intel、Samsung(※ハイブリッド型) | TSMC、GlobalFoundries、UMCなど |
利点 | 設計と製造の連携が強い | 製造特化で最先端技術に集中できる |
欠点 | 設備投資が大きい。柔軟性に欠ける | 設計力がないので他社依存 |
どっちが良いかはともかく、最近Intelの体制は間違いなく上手くいってません。
逆に勝ち組になったのは専業のTSMC(ないし、最初から製造を委託したAMDやNvidia)。
TSMCは得意分野であるチップ製造に集中投資し、Apple、AMD、スマホ半導体チップのクアルコムなどから製造受託。この人たちなしで世の中は成り立たず、技術の先端を行ってます。

実はIntel。全くファウンドリ事業をしてなかったわけでもなく、2021年からIDM2.0と呼ばれる体制のもと、半々を目指そうとしていました。以前ブロードコムの製造受託したりもあったんですが、検査基準が満たせず失敗。
2023年にファウンドリ部門の赤字は約70億ドル。黒字に転換するのは2027年とか言われてましたが、今では売却の噂すら出てます。
intelは2016年データセンター方面を伸ばすため買収したアルテラも最近売却し、ぶっちゃけなんで買収したんだ?という話もあるほど。ファウンドリ部門もいつ売られてもおかしくない状態です。
話をチップ製造に戻しますが、なぜ降伏状態なのか。ライバルTSMCにチップ製造を委託したためです。
なぜ委託かというとCPUは競争の目があるため。
TSMC製を積めば争える余地があるから。
半導体王者を誇ってきた者からすればTSMCに屈した形。屈辱でしかありません。それだけCPU競争でAMDに勝ちたいし、まだ勝てる目もあるわけです。
AI競争(VS Nvidia) 敗北

AI競争でもIntelは勝つことができませんでした。
Nvidiaはグラフィックボードの王者。元々ディープラーニングやAI処理はGPUの方が相性が良く、CPUは向いていません。

IntelはかねてからCPU中心。GPUやAI競争に負けたのはCPUの延長上と位置付けたためと言われています。
結果GPUやAI専用チップの並列処理に太刀打ちできなかったんです。
もっと言えば、IntelはAI市場がここまで膨らむことを予期しておらず、それほど注力してませんでした。

AIに使うGPUは同じくAMDもNvidiaに苦戦しています。今AI系ソフトを使いたいならNvidia一択状態。AMDは選択肢にすら入りません。開発者用であれ個人用であれ。
一応開拓が始まったばかりの分野。これからどうなるか分かりません。とはいえ、AI方面は誰もIntelには期待してないのが現状って感じです。
スマホ向けモバイルCPU競争 (vs ARM系) 大敗北

ちょっと前の話になりますが。Intelはモバイル向けCPU、ないしSOCのatomを出してた時もありました。
今やスマホはARM系CPUが主流。というかほとんどこれ。
atomは2020年に撤退。twitter(現X)での通称は"ゴミ"。処理性能も悪くバッテリー消費も激しく、よくよく考えればIntelの凋落と先見の明のなさはこの頃から始まってたかもしれません。
項目 | Intel Atom | ARM系 |
---|---|---|
ベース | x86 | ARMアーキテクチャ |
消費電力 | 省電力?だよ | 省電力 |
カスタマイズ | ほぼ無い | 自由に設計可 |
互換性 | Windowsと相性が良いよ | Android/iOSと相性が良い |
市場シェア | なきにしもあらず | 圧倒的 |
現在の用途 | IoTや一部低価格PC | スマホ、タブレット |
世界が事故った13、14世代不具合

その他まだ懸念点はあって世界中で事故ったintel CPU不具合です。
14世代と13世代CPUの中でもハイ~ミドル帯が過剰な電圧要求により劣化、破損するという問題でした。
Intelは文句言われないと動かない消極的な姿勢を貫き、散々非難されてようやく「biosアプデあげるから頑張れ」みたいな対応をします。
ぶっちゃけ今でもこれで直ってるかはみんな良く分かってないし、使った分劣化はしているみたいな。なのに交換も壊れないとできないみたいですし。

大ヒンシュクで、今やCPUの筆頭もAMDへと移りました。
実際、リコール対応したらインテルが潰れる可能性まであったので、消極的対応は仕方なかったかもしれません。彼らが言いたいことは「すまん、今回は許してくれ」ということ。(実際はまともに謝ってすらないですが)

今後事故ったとき対応はあのintel様だぞ、ということは覚えておいた方がいいです。すでに我々は責任果たさないintelの姿見たわけですから、これで問題発生しても「そりゃ買ったやつが悪いわ」と言われるのがオチ。
AMDが正しく対処するか分からないし、CPU不具合にリコールなんて現実無理だったでしょうけど、買う人はリスク負ってまでintlelに義理立てしなくても...とは思います。まあこいつがいないと今度はAMDが手を抜くので頑張ってほしいですけどね。
結局インテルは何がしたかったのか

なぜインテルは負けたのか。一言で表します。
インテルは全部勝とうとした。
これです。
彼らは事業に優先順位を着けず、全部で勝とうとしました。
結果、何が大事だったのか、どうやって勝とうとしたのか。延々とチグハグなまま進みました。
技術競争に絶対はないですが、一度差をつけられると抜き返す間なく撤退を余儀なくされます。日本のスマホ・PCが良い例でしょう。
(一応)Intelはどの分野も頑張ると言ってますが、今後どうなるか非常に注目です。