入湯税というおかしい税は(多分)日本だけです。払わない&拒否できるでしょうか。旅行中に税を現地徴収されるこの制度について解説します。
入湯税を払わない&拒否できるか
最初に結論をいいますが、拒否できません。
宿泊した時点で払うのは確定事項みたいなものです。
次に「お風呂入ってないから拒否できるか?」ですが、これも拒否できません。
理由は入湯していないことを証明するのが難しいからです。
例を挙げると、(例に挙げて申し訳ないんですが)白馬村が令和4年3月「入湯税 特別徴収手引き」を出しており、こんな記述をしています。
Q. 宿泊したが入湯しなかった場合は納税を拒否できますか?
引用元 : 白馬村 「入湯税 特別徴収手引き」 https://www.vill.hakuba.lg.jp/material/files/group/3/nyutouzeitebikinew.pdf
A. 鉱泉を使用している宿泊施設に宿泊する時点で、宿泊客が入湯する可能性は非常に高く、本人がいかに主張していても実際に入湯していないことを証明するものがない限り、納税していただきます。
自治体によって差があると言われる入湯税ですが、どこも同様の解釈がされているでしょう。
そして、「温泉がないところも入湯税はあるのか?」ですが、
入湯税は「鉱泉浴場」と限定されています。つまりスーパー銭湯とかはありません。
ただし、鉱泉水が使用されていれば入湯税がかかります。
鉱泉水って何?って話ですが、温泉は「肩こりに効く」とか「リウマチに良い」とかうさんくさいフレーズありますよね?
鉱物は成分を含み、地下で溶けて水と混ざって出てきます。25度以下でミネラルを含み自然と湧いたものを鉱泉水と言います。
つまり、どっかからとってきて温泉に鉱泉水をつっこめば、それも入湯税の対象になるわけです。
聞けば聞くほど不思議な税だなあと思うかもしれません。
入湯税はおかしい税?日本だけが払う不思議税の仕組み
(調べた限り)日本だけが入湯税を払っています。
そもそも入湯税とは何か。
鉱泉源を保護する施設や、観光振興のために使われています。
一旦消費者が宿泊施設に払い、それが地方自治体に収められます。
消費税と同じで、別に宿泊施設がもらえるわけではありません。
要は宿泊施設は好きでもらってるわけじゃないので、宿泊先を責めるのは筋違いってことです。
入湯税は、入湯施設の利用と市町村の行政サービスとの関連に着目し、鉱泉浴場所在の市町村が課する目的税です。その使途は、環境衛生施設の整備、鉱泉源の保護管理施設の整備、消防施設その他消防活動に必要な施設の整備、観光の振興(観光施設の整備を含む)に要する費用に充てることとされています。
引用: 総務省 入湯税 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_20.html
1.課税団体 鉱泉浴場所在の市町村 2.課税客体 鉱泉浴場における入湯行為 3.税率 1人1日150円を標準とする 4.徴収方法 旅館等が特別徴収義務者として、入湯客から入湯税を徴収し、市町村に納入 5.使途 環境衛生施設の整備
鉱泉源の保護管理施設の整備
消防施設その他消防活動に必要な施設の整備
観光の振興(観光施設の整備を含む)
入湯税が現地で別途払いの理由
入湯税はチェックアウト時に現地で支払います。
理由は地方税を制定している総務省のサイトを見ても特に記載がありませんでした。
予想ですが、システム上の理由であり、キャンセル料のせいです。
宿泊施設は何日前キャンセルなら何%支払ってもらうって規定がありますよね?
実際に泊まらない限り入湯税は発生しないので、入湯税込みで事前支払い→キャンセル料請求は誤差が出ます。
一応150円を標準としていますが、法律上違う金額を定めることもできますから。
また、修学旅行の学生や、12歳以下の子供は免除されます。
この辺が関係しているのかもしれませんし、事業者側に帳簿時の負担が増えるからかもしれません。
個人的に払うのは全然いいんですが、旅行先で「税」とつくものは聞きたくないですけどね。
入湯税と宿泊税の違い
入湯税とは別に宿泊税というものもあります。
地方自治体の条例で課税対象地域の宿泊施設に泊まった場合、課税されます。
これも別途現地払いです。
僕はこっちはあまり記憶にありませんが、京都新聞によると2019年度以降は年間45億も計上されているそうです。
こちらも同じことで、拒否できません。
また、宿泊側に訴えたところで、市町村から言われて徴収しているだけなので、無駄です。
入湯税と同じく、拒否する人や、訪日外国人とトラブルになるケースもあるようです。
払うのは良いけど、なんかもやもやする税
話を聞けば聞くほどおかしい税だなあと思うかもしれません。
安心してください。僕も同じことを思っています。
個人的に思うことは、
- 海は無税でなんで温泉は課税?(山は入山税検討中のようです)
- 小銭支払うのはいいけど、旅先で「税」って言葉聞くのはなんだかなあ
- インフラに関与しない温泉で税徴収するの変じゃない?
- 宿泊料にねじ込めないの?外国人は混乱する
特に3番ですが、例えばフランスのエッフェル塔に登ったとして、「塔の維持のために税金払ってください」と言われたら、やっぱり「は?」となるでしょう。
エッフェル塔はパリ議会が所持しており、入場料から維持費を捻出しています。
一方、富士山理論で言えば、県と市町、あとは登山しない県民の税金が維持費です。
そういう意味では、利用対象者に課税をかけるのはあながち間違っていないように見えます。
が、それって無理な話です。公園だって図書館だって市町村の持ち物ですが、利用しなくても僕らは課税されています。
思うのは、インフラ関連の数ある目的税のなかで、「なんで温泉?」ということです。
また、小銭とはいえ外国人旅行客からすれば悪質な宿泊先に見えないこともないです。
目に見える形で別途徴収する形は改善できないかと思います。
わざわざ来日してくれてちょっとでも嫌な思いされたら、日本人としても本意ではないですしね。
サクッと払って宿泊先と笑顔でチェックアウトする方が良い
色々もやっとするでしょうが、一番お伝えしたいのはサクッと払って、宿泊先とは気持ち良くやり取りしましょうということです。
何度も言いますが、彼らは税を間接的に納めているだけです。
また、自治体も温泉を保護するために財源を確保している立場です。
知ったうえでやり取りすれば、少なくとも宿泊先と嫌な思い出を残すこともないでしょう。